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【溶接について】 |
・溶接の歴史 |
溶接技術は、近年、急速に進歩発展し、いわゆる組立生産技術の主力となっている。 |
大洋をめぐる巨大タンカーや深海艇、海峡にかかる長大橋、街にそびえたつ超高層ビルや |
大形タンク、原子炉や宇宙ロケットに至るまで、溶接・接合技術を無視した近代工業はないと |
いえるほど、あらゆる製造分野で利用されている。 |
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石器時代から、青銅器、鉄器時代へと続く有史以前の種々の埋蔵品からは、素材である石、 |
銅、鉄などを『切る』こと、『くっつける』ことが、人類の最も主要な加工技術であったことが |
明らかにされている。 |
確かに、紀元前前3000年頃には、すでに金属を接合する方法として、鍛接、リベット接合、 |
ろう付が用いられた証拠が見られる。 |
たとえば、メソポタミア地方で発見された雄鹿の頭部をあしらった銅製の飾り板(レリーフ)の |
枝角の接合部にはろう付が用いられている。 |
少し時代は下がるが、紀元前1400年頃に造られた古代エジプト王、ツタンカーメンの黄金の |
棺の中から、明らかに鍛接したとみられる鉄製の装飾品が発見されている。 |
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接合は古くから知られた技術であったが、他の多くの工業技術と同様、近代的な技術としての |
溶接の幕開けは、産業革命まで待たなければならなかった。 |
金属を溶融させ接合する技術の発明は、19世紀に入ってからである。 |
1800年にイギリスのデイビーがアークを発見した。 |
しかし、当初アークはアーク燈の開発に興味の中心があり、溶解・溶接への応用については |
ほとんど関心をもたれなかった。 |
それに、大電力を必要とするアークを長時間持続させるためには、何よりもそれだけの電力容量を |
もつ電池・電源の開発が必要であった。 |
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有名なファラディによる電磁誘導の発見が1831年であり、その30年後には、発電機(ダイナモ)が |
開発され始めることになる。 |
1880年頃、フランスのドメリタンが、蓄電池の鉛板の接合に炭素アーク熱を利用した。 |
そして、その弟子ドベナールは、いろいろと工夫と改善を加え、実用的炭素アーク溶接法を開発し、 |
特許を取得した。 |
その後、ロシアとアメリカで、それぞれ別々に金属電極と金属板との間に発生させたアークで |
金属板を溶融溶接する、被覆アーク溶接のもとになる、いわゆる『金属アーク包摂法』が開発され、 |
以来、溶接技術は急速に工業的に利用されはじめることとなった。 |
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このように、19世紀から20世紀初めからは、現在広く実用されている溶接法の原形が次々と |
開発された時期である。 |
さらに、第2次世界大戦にかけて、サブマージアーク溶接、ティグ溶接、ミグ溶接など現在の主流を |
なす溶接法が開発され、工業化社会の清算技術の担い手となる溶接技術へと発展する端緒が |
開かれる。 |
わが国への本格的な導入は、欧米に比べてやや遅れ、ほとんど戦後になってからであるが、 |
その後の普及・進展はめざましく、種々の改良が加えられ、重工業の発展に大きな影響を与えた。 |
最近では、1948年に電子ビーム溶接、1960年頃にレーザー溶接法が開発されも、多種多様な他の |
溶接法とともに、材料や構造に応じて適切な溶接法を選択することができるようになってきた。 |
そして、溶接・接合品質の安定化、溶接作業の高能率化、などを目指して、より精緻な技術の開発が |
精力的に進められ、ハイテクノロジーとしての溶接・接合技術が確立されつつある。 |
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・溶接の特徴と原理 |
溶接・接合が適用される材料の種類は、ほとんどすべてにわたっており、制限はない。 |
しかし、工業的に溶接組立の対象となる製品は、ほとんどの場合、金属材料を用いたものである。 |
そこで、溶接の特徴を見てみよう。 |
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1.継手構造が簡単になる。 |
2.材料や工数を少なくすることができ、経済的である。 |
3.継手効率(=継手の強さ/母材の強さ)が高く、また、優れた機密・水密性を有する。 |
4.厚さに関しては、ほとんど無制限に接合できる。 |
5.作業時の騒音が少ない。 |
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このように、溶接は接合法として、特に金属の接合に優れた長所をもっているが、溶接特有の問題 |
として注意しなければならない点もいくつかある。 |
溶接は、ほとんどの場合、局所的に熱を与えて接合すべき個所を溶融する。 |
接合部は、加熱・溶融・凝固・冷却という一連の過程をたどるのが通常である。 |
したがって、この熱履歴に伴って溶接部とその近傍の材質は変化するし、また、熱膨脹・収縮も |
生じるので、変形・ひずみや内部応力の残留なども生じる。 |
それらをまとめると、次のようになる。 |
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1.局部的な加熱冷却によるひずみが発生する。 |
2.残留応力が発生し、疲労強度、応力腐食割れなどに悪影響を与えることがある。 |
3.母材の性質が溶接熱によって変化することがある。 |
4.構造物としてのぜい性破壊の発生に注意が必要となる場合がある。 |
5.溶接金属という新しい異質な材料ができる。 |
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溶接は、以上のような問題があり、溶接部の金属学的、力学的性質が母材を含めた構造とうまく整合 |
するように設計、施工することが重要である。 |
また、通常の機械的接合法と異なり、接合過程が不可逆的である。 |
いったん溶接接合したものを分割して再接合しても、もとと同じものはできない。 |
さらに、溶接欠陥の検出には非破壊試験が必要である。 |
さて、「溶接」はどのように定義されているのであろうか。 |
一般には、「2個以上の部材を、その接合部が連続性を持つように、熱または圧力、もしくはその |
両方を加え、さらに、必要があれば適当な溶加材を加えて、部材を一体化する操作」であると |
いわれている。やや理解しにくい表現ではあるが、溶接の基本は金属原子同志に生じるような、 |
強い結合を利用して接合することにあり、リベットやボルト締めなどを用いて部材をつなぐ |
「機械的締付」、のりや樹脂などによる「接着」とは異なる材質的結合として「溶接」が定義 |
されているのである。 |
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<溶接法の分類> |
溶接は、その接合の機構によって融接(溶融接合)、圧接(固相接合)、ろう接(液相一固相反応 |
接合)に分けられる。 |
融雪は被溶接材(母材)の溶接しようとする部分を加熱し、母材または母材と溶加材(溶接棒など) |
とを融合させて溶融金属を作って、これを凝固させ接合する方法で、機械的圧力は特に加えない。 |
圧接は接合部へ機械的圧力を加えて行う溶接法である。 |
加圧と同時に熱を加える場合が多いが、その場合でも接合面を溶融させないで溶接する。 |
ろう接は母材を溶融することなく、母材よりも低い融点を持った金属の溶加 |
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<溶接開先の種類> |
開先溶接は、部材の接合面に適当な形の溝を加工して溶接するもので、突合継手、T継手、角継手 |
に適用される。 |
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現場名:とりや沢橋他橋梁工事より(元請会社:十和建設株式会社/鉄筋径:D22) |
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